龍使いの歌姫 ~卵の章~
暗い森の中を、もう一人歩く者がいた。月明かりという頼りない光を目印に、大きな大剣を背負い、茶色のマントをなびかせながら歩く。
真っ黒な髪は、闇の中に溶けてしまいそうだ。
「……白夜村……か」
呟かれた声は、男性のものだった。
「……龍の卵は、生まれる前に壊す」
男の声は、闇と共にかき消えたのだった。
薄暗い森の中を歩いていたレインは、ようやく金色のものを見つけた。
暗闇の中を照らす光を放つお陰で、思ったよりも早く見つけることができ、ホッと息を吐く。
(あった。……?ちょっと重い?)
持ち上げると、最初に持ち上げた時よりも重い。けれども、持てないほどではない。
(……これから、どこへ行けばいいんだろう?)
姉がいつも手を引いてくれていた。悩んだ時は姉が答えをくれた。
けれども、これからは自分で考え、一人で生きていかなければならない。
レインは歩き始める。村とは反対の方向へと。
「姉さん……クックレオ……」
油断すると、レインの涙腺はまた緩んだ。ポタポタとまた瞳から涙が溢れ落ちる。
ピチャッと音をたて、金色のものの上に涙が落ちた。
すると―。
「?温かい」
先程よりも光が強くなり、温かさが増す。
まるで、泣くなと言われているように。
「……あなたは、何?」
問いかけても答えは返ってこない。けれども、レインは少しだけ安心した。
この温かさがあれば、まだ自分は歩けると。
腕から落ちないように、しっかりと抱き直す。
とにかく今は、歩いていくしかない。
(川を探さなきゃ。喉が乾いちゃった)
人間が食事を取らなくても、水だけで少なくとも一週間は生きられる。
とにかく、水だけでも得られなければ。
レインは記憶をたよりに川を探しにいく。この森は何度か姉と入っていたし、川が流れてることも知っている。
―私の分まで生き延びて―
姉の言葉が甦り、レインは誰にでもなく頷いた。
(生きたい。……私、死にたくない)
生きて、生き延びて、そしていつか、姉の死の真相を暴く。
姉を死に追いやったフードの男達の正体も、姉の本当の姿も。
それだけが、今のレインの生きる糧なのだ。
真っ黒な髪は、闇の中に溶けてしまいそうだ。
「……白夜村……か」
呟かれた声は、男性のものだった。
「……龍の卵は、生まれる前に壊す」
男の声は、闇と共にかき消えたのだった。
薄暗い森の中を歩いていたレインは、ようやく金色のものを見つけた。
暗闇の中を照らす光を放つお陰で、思ったよりも早く見つけることができ、ホッと息を吐く。
(あった。……?ちょっと重い?)
持ち上げると、最初に持ち上げた時よりも重い。けれども、持てないほどではない。
(……これから、どこへ行けばいいんだろう?)
姉がいつも手を引いてくれていた。悩んだ時は姉が答えをくれた。
けれども、これからは自分で考え、一人で生きていかなければならない。
レインは歩き始める。村とは反対の方向へと。
「姉さん……クックレオ……」
油断すると、レインの涙腺はまた緩んだ。ポタポタとまた瞳から涙が溢れ落ちる。
ピチャッと音をたて、金色のものの上に涙が落ちた。
すると―。
「?温かい」
先程よりも光が強くなり、温かさが増す。
まるで、泣くなと言われているように。
「……あなたは、何?」
問いかけても答えは返ってこない。けれども、レインは少しだけ安心した。
この温かさがあれば、まだ自分は歩けると。
腕から落ちないように、しっかりと抱き直す。
とにかく今は、歩いていくしかない。
(川を探さなきゃ。喉が乾いちゃった)
人間が食事を取らなくても、水だけで少なくとも一週間は生きられる。
とにかく、水だけでも得られなければ。
レインは記憶をたよりに川を探しにいく。この森は何度か姉と入っていたし、川が流れてることも知っている。
―私の分まで生き延びて―
姉の言葉が甦り、レインは誰にでもなく頷いた。
(生きたい。……私、死にたくない)
生きて、生き延びて、そしていつか、姉の死の真相を暴く。
姉を死に追いやったフードの男達の正体も、姉の本当の姿も。
それだけが、今のレインの生きる糧なのだ。