龍使いの歌姫 ~卵の章~
卵の名前
ズルズルズル。

何かが引きずられるような音が耳に響く。

おまけにお腹や足が痛い。

「……う……ん………?」

うっすらと目を開けると、像のようなピラピラな耳たぶに金色の丸いピアスを両耳に着けた、浅黒い肌の変な生き物が背中を向けていた。

上半身は何も身に付けておらず、赤いトンガリ帽子と赤いズボンをはいており、肩には縄を担いでいる。

ふと気になって横を見ると、同じような姿をした生き物が、卵を縄でぐるぐる巻きにして引きずっていた。

(え?……え??)

起き上がろうとして気付く。身動きが一切出来ないのだ。それに、体が何かで縛られているように窮屈で、レインは顔だけ自分の体を見る。

だが、顔だけ振り返っても、後ろの森が少し見えるだけで、自分の今の状態は分からない。

(この人(?)の縄、私に繋がってる?)

と言うことは、考えられることは一つだけだった。

(私、卵みたいにぐるぐる巻きにされちゃったの?!)

驚いても、生き物は引きずることを止めない。

「……あの」

レインが声をかけると、生き物は振り返った。

まるで黒豆のように小さい目が、レインを覗きこむ。しかも、鼻の下には白い髭が生えており、何だか小さいお爺さんのようだ。

「えと……あの……痛いの」

「イタイ?」

顔をグッと近付け、生き物は尋ねる。片言で何とも不思議な声だ。

子供のようにも大人のようにも聞こえる。

「………」

「イタイ?」

呆けるレインに、生き物はもう一度尋ねる。それにハッとしたレインはぶんぶんと首を縦に振った。

「うん、痛いからほどいてほしい!」

「ショウチ」

生き物は頷くと、レインの縄をほどいた。

自由になった両手を上に上げ、レインは伸びをすると、卵を見る。

「その子の縄も解いてほしい」

「ウム。ショウチ」

卵を引きずっていた小人が頷く。

声がどっちも全く同じなので、どっちが喋っているのか分からなくなりそうだ。

卵の縄が外されると、レインは卵を抱き上げた。

(?また重くなった?)

不思議に思って首を傾げる。だが、まだ運ぶのには支障はないので、取り敢えず今の状況を確認することにする。

(あ、その前に……良かった。横笛あった)

無くしてしまっては大変だ。レインはしっかり横笛を服の中にしまいこむ。

「ねぇ?あなた達は誰?」

「ワレラ、コビト。リュウゾク、オトモダチ」

小人という言葉は分かったが、リュウゾクという言葉に首を傾げる。

「リュウゾク……龍族?それとも竜族?」

その辺の小石で、地面に文字を書く。すると、小人は「龍」の文字を指差した。

どうやら字が読めるらしい。

「こっちの龍かー。でも、龍って神龍様しか居ないんでしょう?」

ティアナから聞いた話を思い出す。昔は龍が沢山いたが、人間が国を納めてからは、神龍以外の龍は羽が無くなったと。

だから、竜と呼んだと。

「リュウゾク、タニ、イル。ソノカタ、リュウノ、オトシゴ。ダカラ、オマエ、タスケタ。ワレラノトモ、オマエガ、スクウカラ」

「この子が龍の卵で、龍の子供なのは分かったけど、あなた達のお友達だから、この子と一緒にいた私を助けたってこと?」

レインの言葉に、小人は同時に頷いた。
< 17 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop