龍使いの歌姫 ~卵の章~
レインの予想通り、頂上の少し手前で夜になってしまい。野宿の準備をする。

集めた小枝と葉っぱを積み重ね、火付け石を擦って火を付ける。

野宿の可能性を考え、小人から火付け石を譲ってもらったのだ。

そのお陰で、木の棒で木を擦る作業をしなくてすんだ。レインは小人に深く感謝した。

「……ふぅ。木の実もだいぶ減っちゃったなー。龍の谷に着くまで持たせないと」

下手をしたら全部食べてしまいそうで、唾を飲み込んで視線を反らす。

籠から取り出したティアを、また膝の上に乗せて、星が煌めく夜空を眺めた。

(あの人……)

ふと昨日のことを思い出し、背筋が震える。

(もし、私がティアを渡していたら、あの人はティアを殺しちゃってたの?……どうして?)

卵であることが、そんなに悪いことなのだろうか?生まれる前に、罪のあるものなどいるのだろうか?

(私の回りの人は、何も悪くないのに傷つけられる)

大好きな姉も友達のクックレオも。

(…………もう、誰も失いたくないよ)

ティアに顔を埋めて、レインは目を閉じた。

震える瞼からは、また涙が溢れる。そして、ティアの上へと流れ落ちた。

金色の光を放つティアは、レインを慰めるように温かな温度をくれる。

幼いその体には、あまりにも重いものを背負わされ、けれども、それを代われる人はいない。

レインが、自分で背負っていかなくてはいけなかった。

だが、これはまだ軽いと言える。大人になった彼女が、更に重く苦しい運命を背負うことになるとは、レイン自身この時はまだ気付かなかった。

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