龍使いの歌姫 ~卵の章~
薬草を採りながら、レインは奥へ奥へと進んでいく。すると、レインの懐が暖かくなった。
「?姉さんのくれた横笛……光ってる?」
レインが持ち歩き安いようにと、姉が紐をくくりつけてくれたので、レインは横笛を首に下げていた。
一応ティアナから、服の中に入れておけと言われていたのだが、何だか熱さが増した気がしたので、レインは横笛を取り出す。
その横笛が、青白い光を纏っている。
「何だろう?」
不思議に思いながらも、レインは歩みを進めた。ポシェットの中にはまだまだ薬草が入る。
沢山集めれば、ティアナも沢山喜んでくれる。
「……あれ?」
ふと目の前に、大きな木を見つけた。木と言うよりは、沢山の蔓(つる)が絡み合って太くなったような、不思議なものだ。
「?こんなのあったかな?……あ!」
蔓に抱かれるように、根元には金色に輝く何かがあった。
「何だろうこれ?」
側によって、ツンツンと突っついてみたり、撫でてみたりするが、ザラザラとした感触が伝わってくるだけで、動く気配はない。
(この蔓切れるかな)
サバイバルナイフを取り出し、絡み付いている蔓を切ろうと刃を当てた。
だが―。
「かったーい!!」
まるで石のように蔓は固く、レインが何度もギコギコとナイフを擦っても、傷ひとつ付かない。
(……これ、植物じゃないんだ。でも、どうしよう?)
せっかく綺麗な物を見付けたのだし、プレゼントのお礼に、ティアナにあげようと思ったのだ。
横笛へと手を伸ばすと、ティアナの優しい笑みが浮かぶ。
「そうだ!良い方法が思い浮かぶまで、これ吹いてよう!」
横笛を顔の前まで持ち上げ、レインは息を吸い込み、そして一番先端の太い穴へと息を吹き込んだ。
「………あれ?」
しかし、横笛から音が漏れることはなく、スカーっと空気の抜ける音だけが響いた。
「何で?ちゃんと他の穴も押さえてたのに……姉さんに吹き方教わらなきゃ」
せっかく貰ったのだ。ならば、吹けるようになりたいと思うのは当たり前だろう。
「……あーあ」
レインは蔓の固まりへと倒れこむ。蔓の固まりを手で触ると、何故か懐かしい気がした。
「……コロコロコロリン どこへ行く……駄目。歌っちゃ駄目だ」
村の子供達は、「卵の歌」というのを良く歌っていた。けれども、レインが真似をして歌おうとすると、ティアナに止められた。
―何があっても、貴女は歌っては駄目よ。ね?お願い―
どうしてと、レインは聞けなかった。泣きそうな顔のティアナを見るのが、堪らなく辛かったから。
(……私、そんなに音痴なのかな~。それとも、姉さんは卵の歌嫌いなのかな?)
卵の歌は竜の歌だと聞いたことがある。最後は食べられてしまう歌詞だ。
竜の肉でさえ好きではない姉だ。なら、竜を食べる歌を姉が嫌っていても仕方がないだろう。
レインがため息を吐くと、シュルシュルと紐がほどけるような音がした。
「え?」
驚いて音の方を見ると、金色のものに絡み付いていた蔓が離れ、コロコロと地面へと落ちた。
「わー!落ちてきた!」
何故という疑問よりも、金色のものが落ちてきたことの嬉しさが勝ち、レインはそれを持ち上げる。
赤ん坊くらいの大きさで、重さはあまりない。レインはそれを抱き抱えると、急いで来た道を戻る。
(姉さんに見せてあげよう!)
姉はどんな顔をするだろうか?そう考えるだけで、レインの足は自然と速くなる。
まるで、褒めてもらうのが楽しみな気持ちの時と同じだ。
レインは一生懸命、来た道を走った。薬草を集めるために遠くへ行けという、姉の言葉も頭からすっかり抜けて。
目の前で運命が変わる、過酷な未来を背負うことになるなど知らず、レインは走って行った。
「?姉さんのくれた横笛……光ってる?」
レインが持ち歩き安いようにと、姉が紐をくくりつけてくれたので、レインは横笛を首に下げていた。
一応ティアナから、服の中に入れておけと言われていたのだが、何だか熱さが増した気がしたので、レインは横笛を取り出す。
その横笛が、青白い光を纏っている。
「何だろう?」
不思議に思いながらも、レインは歩みを進めた。ポシェットの中にはまだまだ薬草が入る。
沢山集めれば、ティアナも沢山喜んでくれる。
「……あれ?」
ふと目の前に、大きな木を見つけた。木と言うよりは、沢山の蔓(つる)が絡み合って太くなったような、不思議なものだ。
「?こんなのあったかな?……あ!」
蔓に抱かれるように、根元には金色に輝く何かがあった。
「何だろうこれ?」
側によって、ツンツンと突っついてみたり、撫でてみたりするが、ザラザラとした感触が伝わってくるだけで、動く気配はない。
(この蔓切れるかな)
サバイバルナイフを取り出し、絡み付いている蔓を切ろうと刃を当てた。
だが―。
「かったーい!!」
まるで石のように蔓は固く、レインが何度もギコギコとナイフを擦っても、傷ひとつ付かない。
(……これ、植物じゃないんだ。でも、どうしよう?)
せっかく綺麗な物を見付けたのだし、プレゼントのお礼に、ティアナにあげようと思ったのだ。
横笛へと手を伸ばすと、ティアナの優しい笑みが浮かぶ。
「そうだ!良い方法が思い浮かぶまで、これ吹いてよう!」
横笛を顔の前まで持ち上げ、レインは息を吸い込み、そして一番先端の太い穴へと息を吹き込んだ。
「………あれ?」
しかし、横笛から音が漏れることはなく、スカーっと空気の抜ける音だけが響いた。
「何で?ちゃんと他の穴も押さえてたのに……姉さんに吹き方教わらなきゃ」
せっかく貰ったのだ。ならば、吹けるようになりたいと思うのは当たり前だろう。
「……あーあ」
レインは蔓の固まりへと倒れこむ。蔓の固まりを手で触ると、何故か懐かしい気がした。
「……コロコロコロリン どこへ行く……駄目。歌っちゃ駄目だ」
村の子供達は、「卵の歌」というのを良く歌っていた。けれども、レインが真似をして歌おうとすると、ティアナに止められた。
―何があっても、貴女は歌っては駄目よ。ね?お願い―
どうしてと、レインは聞けなかった。泣きそうな顔のティアナを見るのが、堪らなく辛かったから。
(……私、そんなに音痴なのかな~。それとも、姉さんは卵の歌嫌いなのかな?)
卵の歌は竜の歌だと聞いたことがある。最後は食べられてしまう歌詞だ。
竜の肉でさえ好きではない姉だ。なら、竜を食べる歌を姉が嫌っていても仕方がないだろう。
レインがため息を吐くと、シュルシュルと紐がほどけるような音がした。
「え?」
驚いて音の方を見ると、金色のものに絡み付いていた蔓が離れ、コロコロと地面へと落ちた。
「わー!落ちてきた!」
何故という疑問よりも、金色のものが落ちてきたことの嬉しさが勝ち、レインはそれを持ち上げる。
赤ん坊くらいの大きさで、重さはあまりない。レインはそれを抱き抱えると、急いで来た道を戻る。
(姉さんに見せてあげよう!)
姉はどんな顔をするだろうか?そう考えるだけで、レインの足は自然と速くなる。
まるで、褒めてもらうのが楽しみな気持ちの時と同じだ。
レインは一生懸命、来た道を走った。薬草を集めるために遠くへ行けという、姉の言葉も頭からすっかり抜けて。
目の前で運命が変わる、過酷な未来を背負うことになるなど知らず、レインは走って行った。