クールな上司は確信犯
リクルートスーツ
会社説明会を社外で開催するため、有希も手伝いを命じられた。
スーツ着用と言われたが、生憎リクルートスーツしか持っていない。
どうしようか、買った方がいいだろうかと迷っていると、今回は手伝いだけなのでリクルートスーツで大丈夫と言われた。
お言葉に甘えて、クローゼットからリクルートスーツを引っ張り出す。
懐かしいなと思いながら袖を通すと、何だか初々しい気分になった。


説明会も終わり、片付けをしていると、和泉が寄ってきて言う。

「その姿、懐かしいな。」
「えっ?」

有希のリクルートスーツ姿をまじまじと見てくる。

「覚えていないのか?入社前に俺と会っただろう?」

いたずらっぽく笑みを称えて、和泉が言う。
まさか和泉課長が覚えているとは。
忘れるわけないです。
だって私はあの時からあなたにときめいているのだから。
そして今、笑いましたよね。

「覚えていてくださったんですね。」
「当然だ。」
「あの時はお世話になりました。こうして一緒にお仕事できて嬉しいです。」

ペコリと頭を下げる有希に、和泉は頭をポンポンと撫でた。

あの時と同じで、とても優しい仕草だった。
何だかくすぐったくて甘酸っぱくて、有希は胸がぎゅっと締め付けられるようだった。
ドキドキしすぎて顔を上げられない。

やっぱり私は和泉課長が好き…。

上司としてではなく。
いつもの厳しい顔も、わずかに笑う顔も、あの落ち着いた声も、頭をポンポンとしてくれる仕草も、全部全部、好き。

好きでたまらないです、和泉課長。
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