クールな上司は確信犯
変化
休日は思わぬところで和泉に出会い嬉しかったのだが、終始翻弄されてしまった。
いろいろなことがありすぎて、あまり思い出せない。

好きだと言われた。
それは部下という意味ではなかった。
そして名前で呼ばれた。
恥ずかしさのあまり机につっぷした有希の頭を、和泉はポンポンと優しく撫でてくれた。
別れ際に、困らせて悪かったなと謝られた。

嬉しいのに、和泉のギャップについていけないでいる。
仕事中の和泉とプライベートの和泉が全く違う。
それは嫌なものじゃなくて、どちらかというともっと好きになってしまうもの。
いや、むしろ強引に好きにならされたもののような気がした。
ほのかに抱いていた恋心に、火を付けられたとでも言おうか。
何だか、もっと彼のことを知りたいと思う自分がいる。
顔を見るだけで、ドキドキが止まらない。


和泉は何事もなかったかのようにいつも通り仕事をしている。
表情もあまりなく口数も少ない。

そんなクールな和泉も、プライベートの強引な和泉も、どちらも好きになってしまった。
好きなのに、好きだと本人に言う勇気がなく、ずるずると日だけが経ってしまう。

本当は、返事をしないといけないと思っている。
好きだと言ってくれたのだから。
だけど恥ずかしくて顔を見るのさえ憚られてしまう。
好きすぎて動揺してしまうのだ。

一目惚れから始まった憧れは、いつの間にか本当の恋に変わっていた。

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