隣 の セ ン セ イ 。
次の日から、紡木さんとの隣人生活が本格的になった。






雨音「おはようございます」


凌介「おはよう」







毎朝の散歩は私の日課で、



ちょうど紡木さんが家を出る時間と同じらしい。





凌介「どこ行くの?」


雨音「散歩です。」


凌介「そっか。行ってらっしゃい」


雨音「行ってきます。行ってらっしゃい」


凌介「行ってきます」






紡木さんは右側の螺旋階段へ、



私は左側の普通の階段へ。






玄関から一歩離れれば、




紡木さんとは背を向ける。







…早くこの場所に慣れないといろいろ不便だ。





買い物だって、スーパーがどこにあるか分からないと困る。





まさか紡木さんに頼むわけにもいかないし。







5分ほど歩くと、小さなスーパーが見えた。





駐車場がないかわりに、




駐輪場には満車状態で自転車が停められている。







もう少し歩いてみると、




高校らしき校舎が見えた。







……まさかね。





こんな近場で働いてるわけ………







生徒「ツムちゃん先生おはよー!!」








近くまで行くと、独特なあだ名で呼ばれて反応する一人の男性。







凌介「ツムちゃん言うなっていつも言ってるだろーー!」





……いたし。






てか生徒さん来るの早くない?




……朝練か。ファイト。








生徒「ツムちゃん先生〜〜」


凌介「紡木先生な??」


雨音「あはっ(笑)」


凌介「え?!……桜井さん!」






あ。いけね。





ちょっと近くまで来すぎたか。





雨音「この辺散策してたらたまたま高校っぽい校舎が見えたんで来ちゃいました」


凌介「そうなんだ」


雨音「……ツムちゃん」


凌介「からかわないでくれますかね…」


雨音「凄いですね」


凌介「え?」


雨音「1年目とは思えないくらい生徒の心に馴染んでる。



……本当に凄いです」






私も……もっと恭弥の心に馴染めてたら。




恭弥の気持ちを考えれていたら、





こんな事にはならなかったのかもしれない…。







……………駄目だね。悲観的になるのは良くない。







雨音「じゃあ、頑張ってください」







ぺこりと頭を下げて背を向けたら、






後ろから呼び止められるように叫ばれた。








凌介「俺が忘れさせてやるよ!!」


雨音「……」








敢えて聞こえないフリをして、




止めかけた足を再び動かすと、






もう一度その声が聞こえてくることは無かった。
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