イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる



私は男性も女性も身につけているスーツや小物など隈なくチェックした。
カメラを勉強するようになってから、こういう風に人や物を観察する事の楽しみを覚えた。
人間って本当に面白い。
でも、私の目の中にある見えないバインダーは、颯爽と歩いて来る一人の男性を捉えた。

それは、やっぱりトオルさん…
濃紺のスーツに後ろに流した黒髪は、嫌味がなくトオルさんの端整な顔立ちに合っている。
それに加えて、度の入っていない角ばった黒縁の眼鏡が頭の良さと育ちの良さを、そしてしなやかな立ち振る舞いは大人の色っぽさを醸しだしていた。

トオルさんは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして私の至近距離まで近づいてくる。


「加恋ちゃん、どうしたの…?」


私はいつものトオルさんの笑顔にホッとした。
そして、トオルさんの左手は私の腰を引き寄せる。


「近くまで用があって来たから、トオルさんの仕事が終わるまでここで待ってようと思って…

たまにはこの辺りをブラブラしてデートしたいな…」


トオルさんは目を細めて私を見ている。
でも、その表情は怒っているわけじゃない。
きっと、私の事を食べちゃいたいってそう思っているいつもの顔…



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