イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる



「ねえ、君って、モデルさんでしょ?
なんか、昔、雑誌で見た事があるなあって思って。
確かローマ字でKARENで出てなかった?」


私はゾッとした。
トオルさんの嫌がる事は私がモデルの仕事をしている事がバレる事。
私はそっと明智君に駆け寄った。


「あの、その事、秘密にしてほしいんですけど。
他の職場の人にはモデルの事、黙ってて下さい。

お願いします…」


明智君って、実はすごく魅力的だった。
おっとりした眼差しで私を優しく見る。
そして、すぐに口角をあげて微笑んでくれた。


「でも、二人で秘密を作ったら、僕はトオルさんに殺されます」


私が困った顔をしていると、明智君はまた微笑んだ。


「じゃ、僕は知らなかった事にしますね。
加恋さんがモデルの仕事をしている事も何も知らない。

時間を巻き戻します。
さっきの質問はもう消しましたから」


明智君はそう言うと、私に律儀にお辞儀をしてやっぱりエレベーターの中に消えて行った。

何??
トオルさんの職場ってこんな素敵な人ばっかりなの?

私は大きく息を吐いた。
私の方こそトオルさんの事を知らな過ぎる…
トオルさんって、一体何者なんだろう…





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