イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
「あ、その、う~ん…
男の人?かな…」
疑問符要らない…
完全に男の人です…
「いくつだ?」
「あ~、その、29歳くらい?」
疑問符要らない…
完全に29歳の男盛りです…
「結婚は?」
「あ~、その、独身だったっけ…?」
分からないふりなし…
バリバリの独身でしょうが…
「却下!」
私は想定内とはいえ、がっくりうなだれてしまった。
却下って…
「で、でも、それってモデル事務所では当たり前の事で…
オーディション前のモデルさんは、ほとんどがそのトレーナーさんに付く事になってる」
「加恋ちゃんに関しては、モデル事務所の当たり前なんてないから。
トレーナーを付けたいんだったら、俺が一流の人間を連れて来る。
食事制限?
そんなの俺が完璧なメニューを考えるよ」
トオルさんは仕事モードの厳しい顔になっている。
そして、目の前に座る私の顎を持ち上げて、意地悪そうに笑った。
「加恋ちゃんは俺と結婚した事で、もう普通の人間じゃないんだ。
中山トオルの奥様は、特別待遇を受ける事が当たり前。
加恋ちゃんが二流の扱いを受けるなんて、俺が絶対に許さない。
最高級で最上級のものを俺が与える…
それが加恋ちゃんにとって普通になるように…ね」
厳しかったトオルさんの顔は、また甘々の蕩けそうな優しい顔になる。
そして、個室の特権である自由な空間で、トオルさんは私に濃厚なキスをした。
このキスだって特別待遇…
だって、こんなにも身も心もうっとりさせるキスのテクニックは、きっとトオルさんしか持ち合わせてないはずだから…