イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
……トオルの嫉妬
俺は会社に誰も居ない事をいいことに、電話でちょっと大声を張り上げてしまった。
いや、誰もいないわけじゃない、明智君はいるんだった…
俺の個人用のブースは窓の近くを選んだせいで、明智君がいる中心の方からは離れている。
といっても、ちょっとしたBGMが流れている程度のこの空間…
俺の声が明智君に丸聞こえなのは百も承知だし、それが面倒臭くてため息しか出てこない。
俺は弁解するつもりではないが、明智君の様子を見るためコーヒーを淹れに行った。
この会社は何でも揃っていて、カフェスペースはもちろんの事、お酒を飲んだりできるカウンターまでも完備している。
俺はコーヒーを淹れ、カフェスペースの明智君に一番近い椅子に腰かけた。
逆に明智君の方が、そんな俺の挙動不審な動きを目を皿のようにして見ている。
そして、沈黙に耐え切れなくなったのか、明智君の方が先に口を開いた。
「さっき、トオルさんのブースから聞こえてきたんですけど、モデル業界の話をされてましたよね?」
どうやら何かのワードが、明智くんの脳内辞典に引っ掛かったらしい。