イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
「あ~、してたけど…」
俺は聞かない方がいいと頭では分かっていても、でも、どうしてもその明智君の何だかはっきりしない情報が気になって仕方がない。
「何か気になる事でもあったか?」
加恋の事になると冷静沈着な俺はなりを潜め、好奇心旺盛な猪突猛進の坊やの俺が顔を出す。
「いや、町田トレーナーの名前が出たので、ちょっと…」
実は、俺は、さっきまで加恋のモデル事務所の社長と話をしていた。
そして、その有名な?町田トレーナーの話を散々聞かされ、でも、それでも納得がいかない俺は、今日の夕方にその町田トレーナーと面接をする約束までこぎ着けた。
それも、加恋同伴で…
「町田トレーナーに何か変な噂でもあるのか?」
明智君は天井を仰いでため息をついた。
もうその姿を見ただけで、変な噂に違いないと俺の正義心が叫んでいる。
「町田トレーナーが一流のモデルを育てるやり方は、二人の信頼関係を得るためにどうやら恋人関係のような付き合いを始めていくらしいです。
そしたら、モデルの子は何でも町田トレーナーの言う事を聞くようになる。
ま、いわゆる洗脳ですね。
そして、そのモデルの子が一流になる頃には、そのモデルの子の方から離れていくように洗脳を解くらしいんです。
だから、何も問題もなく町田トレーナーの元から巣立って行く、みたいな構図のようです」