イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
「…あの、トオルさんには、伝えてないですよね?」
そう言った途端、トオルさんから持たされたお弁当を食べてない事を思い出した。
私は恐る恐る町田トレーナーを見ると、町田トレーナーは氷嚢を軽く揺すりながらそっと目を逸らした。
「まだ伝えてないけど、でもすぐに伝えるつもり。
それは、トオルさんとの約束だから。
でも、お前さ、そんなんでニューヨークへ行けるのか?
社長も心配してたぞ。
加恋の体調が本当じゃないって」
私は小さくため息をつきながら、体を起こした。
そして、町田トレーナーから氷嚢を受け取ると、その長椅子に座り直す。
「妊娠とかじゃないよな…?」
町田トレーナーのストレートな質問は、私の弱った心に突き刺さった。
夢を見たいと思う反面、自分の体の事が気になって仕方がなかったから。
「ま、町田トレーナー…
私、どうすればいいですか…?」
泣きたくなんかないのに、疲れ果てた私の心は涙を外へ出したがる。
「ニューヨークへの切符をせっかく手に入れたのに…
二度と巡って来ないチャンスなのに…」
自分が発した言葉によって、私の涙は滝のように溢れ出す。