イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
「検査薬渡すから、トオルさんにちゃんと話して、家で調べておいで。
そして、出た結果についてちゃんと話をするんだ。
このオーディションを諦める事は辛いかもしれないけど、でも、子供を授かるってそれ以上のものだと僕は思ってる。
もし、妊娠じゃなかったら、一回病院に行って体を調べてもらってこい。
健康じゃないと、あのオーディションは乗り切れないぞ。
分かったか?」
私は小さく頷いた。
今日、トオルさんにちゃんと話をしなきゃ…
どのみち、もう決断を下さなきゃならない時期だから…
町田トレーナーから連絡を受けたトオルさんは、すごい勢いで私を迎えに来た。
でも、妊娠の事は、何も知らない。
車の中でも、私は静かに眠ったふりをした。
もし、妊娠だったら、トオルさんはどんな反応をするのかな…
私との二人だけの時間を満喫したいって、いつもそんな事を言ってたから、あんまり喜ばないかもしれない。
妊娠じゃなかったらいいのに…
トオルさんの思いも、私の夢への思いも、どっちも叶えられるから…
そんな切ない事を考える自分が悲しかった。
家に帰り着くのが怖い…
そんな私を嘲笑うかのように、妊娠検査薬がバッグの中で揺れている。