イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
トオルさんはマンションの駐車場に車を入れると、眠っている私の髪を優しく撫でる。
私は薄目を開けて、そんなトオルさんの表情を覗き見る。
そこにはいつもの甘々で優しいトオルさんはいなかった。
目を細め難しい顔をしている。
私の体の事が心配で、これから先の私の近い未来を案じているそんな顔だった。
「加恋ちゃん、着いたよ…
歩ける? 抱っこしてあげるから体を起こしてごらん?」
トオルさんはもういつもの優しい顔になっている。
私は涙が込み上がるのをグッと堪えた。
「大丈夫だよ… 歩けるから…」
私は体を起こしトオルさんに抱きかかえられながら、車の外へ出た。
ずっと横になっていたせいで、ちょっとだけ立ちくらみがする。
でも、そのふらつきさえトオルさんにばれたくない。
私はさりげなく踏ん張って笑顔で前へ歩き出す。
マンションに着いたら、トオルさんは私をソファに寝かせ、すぐにキッチンで何かを作り始めた。
私はそんなトオルさんをぼんやり見ていた。