イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる



トオルさんの顔は険し過ぎて、直視するのが怖かった。
私は手に握った妊娠検査薬にしょうがなく目を向ける。


「も、もし、妊娠してたら…?」


その一言を絞り出すのが精一杯だった。
私は、複雑だけど、もし、赤ちゃんが出来てたらそれはそれですごく嬉しい。

そして、トオルさんも同じように喜んでほしい。
だって、予定外かもしれないけれど、その赤ちゃんは間違いなく二人の赤ちゃんなんだから。

トオルさんはしばらく私の表情を伺っていた。
そして、小さく息を吐いて二回頷いた。


「まだ、想像もつかないよ…

とにかく、検査しておいで。
その後に、考えればいいんだから」


私はトオルさんの表情にいつもの温かさを感じ取った。
その小さな癒しは、私に大きな勇気を与えてくれる。


「分かった…」


私はそう言ってトイレへ向かった。


妊娠検査薬の判定ってこんなに早いものだとは知らなかった。
説明書には尿をかけてから1~2分はかかると書いてあったのに、私の場合、1分もかからない内に二本目の赤い線がくっきりと浮かび上がった。

簡易的な検査キットかもしれないが、でもこんなにくっきり判定が出れば確実に妊娠に違いない。



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