イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
私の中で何かが変わった。
もう母になるための準備を始めたのか、赤ちゃんを授かった事が嬉しくて仕方ない。
私はその検査薬を握りしめて、奥で待っているトオルさんの元へ駆け寄った。
「トオルさん…」
トオルさんは私を見ると立ち上がり、私がその先を話さない内に大きく両手を広げて私を力強く抱きしめた。
「トオルさん、私の中に赤ちゃんいた…
私とトオルさんの二人だけの赤ちゃんが、お腹の中で一生懸命生きてる…」
トオルさんは何も言わずにただ私を抱きしめる。
「赤ちゃんが私の中にいる事に気付いたら、もう、私の夢なんかどうでもよくなってきた。
トオルさん、私、産みたい…
私達の愛の結晶を大切に育てたい…」
私はトオルさんの胸に顔を埋めて泣きながらお願いした。
トオルさんの反応が怖い。
でも、優しく私の背中をさするトオルさんの指先に、いつもの愛の深さを感じ取った。
「ニューヨークへの挑戦はいいのか…?
それは、後にも先にもない夢のような挑戦なんだろ?」
私はトオルさんの胸に包まれながら、コクンと頷いた。
「学校も中途半端になるぞ…
写真の勉強だって一生懸命やってたのに、それもいいのか?」
私はまた頷いた。
もう、何も持ってきても私の可愛い赤ちゃんに敵うものなんてない。