イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
「…素敵。
でも、明日、ちゃんと検査を受けてみなきゃ。
まだ決まったわけじゃないよ」
加恋はそう言って俺の方へ体を向ける。
「でも、もし、ここに赤ちゃんが出来てたら、トオルさんはどっちがいい?」
加恋は愛おしそうに自分のお腹をさすりながら、そう俺に聞いてきた。
「どっち? 何が?」
隠れパニック状態の俺は、どっちの意味が理解できない。
どっち?と聞かれる以前の、加恋が自分のお腹を柔らかい笑みを浮かべて守るようにさする姿が、俺にとっては衝撃的だった。
そんな微笑み、俺に見せた事がない…
加恋よ、すまん…
俺は完全に壊れてる…
「もう、トオルさん…
男の子か、女の子かのどっちだよ…
私はね、私は、男の子がいいな。
それも、トオルさんに似たカッコいい男の子」
俺は返事の代わりに加恋を強く抱きしめた。
「俺は、嫌だ。
俺に似た男の子だなんて、そんな子が生まれてきたら、俺はその子に勝ち目なんかないじゃないか。
加恋ちゃんと血が繋がってて、加恋ちゃんのお腹の中から生まれてきて、それだけでも羨ましいのに、俺に似た男の子だったら、加恋ちゃんの愛情は全部その子にいってしまう」