イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる
加恋は苦笑いをしている。
そりゃ、苦笑いしか出てこないだろう…
こんなヘタレな30夫を目の前にしたら。
「じゃ、トオルさんは、女の子がいいね。
女の子だったら、トオルさんのライバルにはならないから。
あ、でも、私のライバルになっちゃうか…」
加恋はそう言って、ケラケラと笑った。
いや、俺は笑えない…
もし、女の子だったら?
それも加恋に似たたまのように美しい女の子だったら?
俺はゾッとした。
加恋と同じような大切な存在がもう一人増える?
俺は生きていけるのだろうか…
完全なる下僕気質の俺の性格は、中途半端を嫌うのに…
俺はあれやこれや考え過ぎる自分の頭を、加恋の柔らかい胸の中に沈めた。
「加恋ちゃん、ごめん…
今の俺は、加恋ちゃんの体を第一に考えたい…
加恋ちゃんの体を一番に考える事は、そのお腹の子も守る事になるだろ?
その先の話は、俺の中に父性というものが芽生えてきてから考えるよ。
今は加恋ちゃんだけを愛するただの30男だからさ」