誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 感心できることではないが、それが悪いと、一方的に言うつもりはない。

 瑞樹は誰にだってそうだったし、それでもいい、遊ばれてもいい、むしろそんな瑞樹で遊んでやろうと思っているような、したたかな女性しか基本的に、相手にしていない。

 自分の性にはあわないが、そういう付き合い方もあるだろうと思っていたのだが――。
 だが、今日の閑は瑞樹が感じたとおり、少し調子が狂っていた。

(溺れる者は藁をもつかむっていうしな……まさにそれだな)

 あてにはできないと思いつつ、ゴホン、と咳ばらいをし、背筋を伸ばす。

「まぁ、俺の話じゃないんだけど」
「は?」

 瑞樹が不思議そうに目を見開く。

「だったらなんだ。依頼人の話か?」
「いやいや、守秘義務あるから。まぁ……瑞樹の知らない俺の知り合いの話なんだけど」

 さすがにアラサーにもなって、恋愛相談を友人にするなど恥ずかしいと思う閑は、“架空の友人”という使い古された作戦で、瑞樹に話すことにしたのだが――。


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