誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「閑さんの力になりたいのに、本末転倒だよね……どうしたらいいのかなぁ……」

 そんなことをつぶやいた瞬間、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。

「あっ……」

 どうやら閑が帰ってきたようだ。

 玄関に向かうと、「よかった、まだ寝てなかったんだ……」と、閑が肩で息をしながら、笑顔になった。

「え?」

 よかったとはいったいどういう意味なのだろう。首をひねると、

「話があるんだ。大事な話」

 閑は「あっつ……」といいながらコートを脱ぎ、廊下に捨てる。

「あっ……」

 思わず拾い上げると、閑も、「あっ、ごめん」と笑って、そのコートを引き取り、腕にかけた。常々、こうやって床に物を散らかしていたのだとよくわかる動作だった。
 閑が恥ずかしそうに笑った。

「つい、いつものくせが……ごめん」
「いいですよ」

 小春も笑って、それから閑を見あげる。

「お仕事お疲れ様です」

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