誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 兄妹の末っ子が甘やかされ気味なのは、よくある話だろう。

 そうだ、閑がかわいがられるのは彼自身が可愛いからで――。
 そう言葉を続けようとして、ハッとした。

「えっ、末っ子……?」

 心臓が、ドキンと跳ねる。

 おそるおそる顔を上げると、

「うん……ごめん」

 閑は唇をかみしめて、うつむいた。

「俺、五人兄弟の末っ子なんだ。一番下」
「だったら……その、週に一回、掃除にきてた“弟”って……?」

 嫌な予感がする。

 部屋は静まり返っているのに、ざわざわと不穏な気配がして、息がうまく吸えなくなっていた。

「――」

 閑は硬直する小春を見て、少し悲しそうな顔をした。

 その表情の意味は分からない。けれど愉快なことではないというのは間違いないだろう。

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