誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 バクバクと、胸の中で心臓が跳ねている。
 まっすぐ立っているはずなのに、眩暈がして、とっさにテーブルに手をついていた。

「私……っ……」

 ぐうっと、喉の奥から熱い塊がせり上がってくる。

(私……最初から最後まで、自分のことしか考えてなかった……!)

 自分が養子であると告白した閑の気持ち。
 若くして、社会と繋がりを失いかけていた女性を放っておけず、腹をくくって見守ろうとした、閑の決意。

 衝撃が大きくてすぐに飲み込めなかったが、彼は言ったではないか。

『弁護士を続ける上で、大事なことだったから』と。

 彼は、すべてを打ち明けてくれたのだ。
 なのに自分は、浅はかにも、若い女性がこの部屋に出入りしていると聞いて、たったそれだけのことで、腹を立てた。

 自分だって、下心を隠してここにいることを選んだのに、閑に隠されていたことに、傷ついてしまった。

(なんて馬鹿なんだろう……)

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