誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「閑さん……? 開けますよ~? 失礼しまーす……」

 そう言ってドアを開けた小春は、息を呑んだ。

「あ……」

 なんと閑の部屋はもぬけの殻だった。
 この部屋は、ベッド以外には作り付けのクローゼットしかないのだが、そのキングサイズのベッドの上に、いるべき人がいない。

「えっ!?」

 驚いて、床に這いつくばって、ベッドの下まで確認したが、当然そんなところにいるはずがない。

「……」

 しばらく呆然と、これはどういうことかと立ち尽くしていたが、ハッとしてスマホを身にダイニングへと戻る。

 すると閑から案の定、メッセージが届いていた。

【急にごめんね。依頼人から朝の五時に連絡があって、急遽大阪に行くことになりました。日帰り予定ですが、変更になるかもしれません。なので俺のことは気にせず、自由に過ごしてください。小春ちゃんの朝食食べたかった!】

 それはいつもの閑らしい、気遣いのメッセージだったけれど――。


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