誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
お兄ちゃんの襲来

 金曜日の夜。珍しく空気が澄んだ夜だった。

「たーのもーう!」

 なかもと食堂のガラス戸が勢いよく開けられる。

「おう、コタロー、久しぶりだな!」

 大将がカウンターの中から、笑顔で迎え入れる。
 顔を覗かせたのは、ライダースジャケットに身を包んだ、背の高いワイルドな風貌の男で、虎太郎その人だ。

「俺一人のために店を開けさせてしまて、申し訳ないです」

 虎太郎は恐縮しながらカウンターの前に立ち、深々と頭を下げる。

「なに言ってんだ、コタローは特別だよ。昔は、希美の婿にしたいと思ってたくらいだしな!」

 大将はわっはっはと笑って、それから「座りな」と着席をうながす。

「えっ、婿って、お兄ちゃん、キミちゃんと付き合ってたの!?」

 大将と虎太郎の会話を聞いていた小春は、驚きながら腰を下ろした虎太郎の前にお茶を置く。


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