誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「お兄ちゃん、飲むでしょ?」
「ああ。お前も付き合えよ」
「そのつもり」
小春は笑ってうなずき、グラスをふたつ出して、虎太郎の隣に腰を下ろす。
「はい、どうぞ」
虎太郎のグラスにビールを注ぐと、今度は虎太郎が変わって小春のグラスに注いでくれた。
「なんか不思議な感じするよな」
「なにが?」
「ちびすけが俺にビールを注ぐって姿に、違和感がある」
虎太郎はククッと目を細めて笑って、それから一気にぐいっと、グラスを煽った。
「ちびすけって言っても、私と五つしか変わらないのに」
小春は思わず唇を尖らせる。
「だけどお前、当時どう見ても小学生だっただろ」
虎太郎は手のひらを胸下に持ち上げて、左右にひらひらと動かす。
「このくらいだった」
そういう虎太郎の目は優しい。きっと十年前のことを思いだしているのだろう。