誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「ほんとは好きだったとか、ないの?」
閑の言葉が、少しつっけんどんになる。
「いや……好きだったら、お兄ちゃんとは呼ばないです……今も昔も、ずっとお兄ちゃんです……けど」
小学生にしか見えなかった小春と、チンピラにしか見えなかった虎太郎の間で、そんな艶っぽい展開や雰囲気になったことなど、ただの一度もない。
そもそも虎太郎は、きれいなお姉さん好きなのは、昔から一貫している。
今付き合っている女性がいるかどうかは知らないが、いたとしたら昔と変わらず、きれいなお姉さんに違いない。
「ふーん……」
そして閑は妙にまじめな顔で、小春の返事を聞いた後。
「でも、ずっとそばにいて、すごく信頼されてるわけだ」
どこか不満そうな表情に変わった。
「今の俺にそんな権利ないけど……嫉妬で気が狂いそう」
「え?」
嫉妬という単語が、耳を通り過ぎていく。
(閑さんが、お兄ちゃんに……? なんで?)
首を傾げた瞬間、閑のもう一方の腕が小春の背中を抱き寄せる。
そして強引に、覆いかぶさるように小春の唇を奪っていた。