誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 小春が使っている部屋は、八畳の洋室だ。シングルベッドと小さなテーブル、クローゼットと本棚がある。ごく普通の部屋だ。

 テーブルをよけて、布団ケースを真ん中に移動させていると、

「ここが君の部屋?」

 と、突然声がして。

「きゃっ!」

 悲鳴を上げながら小春が振り返ると、閑が開け放ったドアにもたれるように立って、部屋の中をしげしげと見まわしていた。

「い、い、いつの間に! 早すぎませんか!?」
「そりゃ、ダッシュしてきたし」

 閑は笑って、大きな手の中でくるくると、わざわざコンビニまで買いに行った、例の箱を回してみせる。

「それは……あの……」
「買ってきた」
「なぜむき身なんです……!?」
「袋に入れてるのを待つ暇が惜しくて。袋いいです!って言って、コンビニ飛び出したんだよね」

 妙にまじめな顔で閑が言う。
 そしてにっこりと、花のように美しく笑った。

(袋いいですって……)

 想像すると、面白すぎるではないか。

 その瞬間、妙に強張っていた小春の肩から、すうっと力が抜けていた。

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