誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
しだいに閑の声が小さくなり、すうすうと、規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
どうやら急激に睡魔に襲われたらしい。
それもそうだろう。ハードなスケジュールで仕事をこなし、休みもないうえに、新幹線で移動して帰ってきたばかりだ。
(それも、私に会うために……帰ってきてくれたんだ)
閑に、虎太郎のことを意味ありげに吹き込んだ大将ではあるが、このことがなければ、今日のこの時間は間違いなくなかったはずで。
引っ込み思案で、なにかあると、怖くなって逃げだしてしまう自分のような人間には、少々強引だとしても、有難い手助けだったのだ。
虎太郎や大将、槇先生、周囲の人たちのおぜん立てがあったから、こうやって結ばれることが出来た。
(誰の気持ちも揺らさずに、静かに生きて行こうと思っていたけれど……そんなことよりも、素直に周囲の手助けを感謝しよう……そして、恩返しをできる様にしよう……)
小春はそんなことを思いながら、目を閉じる。
そして閑の寝息を聞いているうちに、深い眠りに落ちていった。