誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
彼が私を離してくれません
三時間ほど眠って、自然に目が覚めた小春は、そっと閑を起さないようにベッドから抜け出した。
(よく眠ってる……)
閑はひさしのように長いまつ毛を伏せて、ぐっすりと眠っている。
狭いシングルベッドの上で、アルファベットのCのような形で眠る閑を見て、小春はほっこりと優しい気分になる。
だが自分が抜けたことによってできた空間が、なんとも寂しく見えて、小春は枕を閑の腕の中に押し込んで、二階から一階へと降りていった。
中本の大将が戻ってきているのではないかと気になったのだが、大将の姿はどこにも見えない。おそらく友人のところに泊っているのだろう。
以前からたまにそういうことはあったので、別にいいのだが、いざここで顔を合わせるのもどんな顔をしていいかわからないと思っていたので、少しホッとした。
本当はゆっくり湯船にお湯をためたかったが、時間がない。
とりあえずシャワーを浴びて着替え、いつものように髪を後ろでひとつにまとめる。
「よしっ……」
ぱちんと両頬を手のひらで挟んで気合をいれると、小春は調理場へと向かった。