誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「はいはい。わかったよ。困らせてごめんね。仰せのままに」
閑はクスクス笑うと、ゆっくりとベッドから降りて、
「あ、さすがに寒いな……」
そんなことをつぶやきながら、階段をトントンと降りて行った。
やっとのことで、閑をシャワーに追いやることが出来たが、どっと疲れが押し寄せてくる。
(もしかして裸で降りていった? 多分そうだよね……。いやでも、背中とか、少しだけ見たかったかも……少しだけだけど……)
そんなことを思いながら、小春はゆっくりと手をおろす。
「ふぅ……」
思わずため息が口から洩れたが、仕方ない。まだ心臓がドキドキと鼓動を打っていた。
(それにしたって、閑さんって、かわいいかわいいって、言い過ぎじゃない?)
生まれてこの方、自分をかわいいと言ってくれるのは、希美と虎太郎くらいしかいなかった。いわゆる身内票だ。なのに突然、予想もしない展開で出来た恋人が、口を開くたびに『かわいい』と、とろけるような声で言うのだから、慣れないし、心臓に悪い。