誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「これ、誰の?」

 閑が柔らかい表情で問いかける。

 そこでようやく意味が分かった。
“これ”とは、小春が用意した着替えのことだったのだ。

「誰のって。あ、お兄ちゃんのために用意してたものですけど……」

 その瞬間、閑の顔が、ぴくりと硬直した。
 一応笑顔ではあるが表情は硬い。

「あいつ泊まる予定だったの?」
「そうですね……ホテルをとってたみたいですけど、大将と飲んだら朝までコースかなって思ってたので、帰るの大変だろうし……私が勝手に用意してたんですけど……」

 そう言いながら、ハッとした。

「あ、大丈夫ですよ、それ新品ですから。下着も全部、買ったものを一度洗っておいただけです」
「いやいや、そうじゃなくて!」

 小春の発言に、閑は呆れかえりながら首を振った。

「新品とか、そんなのを気にしてるんじゃない」

 そして閑は「はぁ……」と深くため息をつき、がっくりと肩を落とした。

「常々思ってたけど、君は少し無防備すぎるんじゃないかな……?」

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