誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 するとふたり席に座っていた美保は、ハッとしたように顔をあげて、小春を見て、柔らかい笑顔になった。

 いつもは胸のあたりまである髪を後ろでまとめているのだが、ゆったりと下ろしていて、丸首のセーターとひざ下のフレアスカートがよく似合っている。

 だが明らかにその頬は痩せていた。

(美保さん、痩せた……?)

 そのことに気づいてドキッとしたが、小春も笑顔を作り、それから急いで店の中に入る。
 あたたかいカフェオレを注文して受け取り、美保の正面に腰を下ろすと、

「久しぶりね」

 と、美保から声を掛けてくれた。

「はい。お久しぶりです」

 小春もそう答えて、着ていたコートを脱ぎ、バッグと一緒に足元のカゴに置いた。

「本当にごめんなさいね。メッセージくれてたのに、無視してしまって」

 美保は申し訳なさそうに頭を下げる。それを見て小春は慌てて首を振った。


< 235 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop