誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「そんな、全然、申し訳なくないですよ! っていうか体調はもう大丈夫なんですか?」
「うん。ちょっと風邪をこじらせたみたい……それですごく気持ちも落ち込んでて……小春ちゃんにあんなメッセージを送ってしまったんだと思う。本当にごめんなさい」

 その様子からして、美保は後悔しているように見える。

 佑二さんと別れようと思います――。

 あのメッセージは、本心ではあるけれど、まだ決定事項ではない。

 彼女の態度からは、そんな気配が感じ取れた。

(もしかしたら、考え直してくれるかも……。まぁ、お父さん次第かもしれないけれど)

 焦ってはいけない。
 小春はゆっくりと息を吐き、そして目の前のカフェオレに口をつける。

「父といったいなにがあったか、教えてくれますか?」
「うん……」

 美保は軽くうなずいて、それから耐え難いと言わんばかりに、唇をわななかせた。

「実は佑二さん……私に隠れて、女の人と会ってるみたいなの」
「――えっ?」

 その瞬間、まさかと思った。

(あの気難しくて神経質なお父さんが、う、浮気……!?)

 にわかには信じられない美保の言葉に、思わず絶句する。

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