誘惑前夜～極あま弁護士の溺愛ルームシェア～

「え、ちょっと待ってください。お父さんが、モテる？？？」

　すると美保は、ふと顔を上げて、目を丸くする小春を見て、クスッと笑う。

「不思議？」
「ええ……」

　嘘をついても仕方ないので、素直にうなずいた。

「昔からちょっと女性不信なところがあったというか……好意を寄せられても、さーっとひいちゃうタイプだから、小春ちゃんは気が付かなかったかもしれないけれど、モテるわよ。仕事は一流だし、物静かでクールだし、かっこいいし。だから私だって、すごく頑張ったんだから」

　なぜか少し自慢げに、胸を逸らされてしまった。

「そ、そうですか……」

　思わぬのろけに、小春は肩の力が抜けると同時に、少しだけホッとした。

　こんな状況でも、美保はまだ父のことを、思ってくれているようだ。

　父から再婚すると言われたとき、ふたりが付き合っていたことに死ぬほどビックリしたが、その後、一緒に暮らし始めて、美保のかいがいしい様子から、彼女が純粋に父のことを思っていることは伝わった。

　お父さんはこの人に、大事にされているんだなぁと素直に感心したのだ。

　だからこそ、自分が家を出ても安心だろうと思ったのだが――。