誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「ええ、もちろん。それが先週のことなんだけど……」
美保はなにかを思いだしたかのように、絶望的な顔になった。
「誰と会っているかは言えないが、お前が考えているような相手じゃないって」
「――えっ」
それを聞いた小春は絶句する。
「さすがにちょっと……言い訳としてはひどくないかしら?」
美保は笑っていいのか、泣いていいのか、わからないような表情になった。
「ひどいです……最低ですね……父がすみません……」
小春は呆然としつつ、がっくりとうなだれた。
(嘘でしょ、お父さん! なんなの、それ!)
椅子に座っているのに、クラクラとめまいがする。
思わず膝の上でぎゅっとこぶしを握っていた。
「小春ちゃんのせいじゃないから、謝らないで。ただ聞いてほしかっただけだし、私だって……そういう人だってわかってたわけだし。ただ、無性に悲しくて……」
美保はそれからゆっくりと、目の前のカップに口につける。