誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 頑固で仕事一筋の父は、そういう下手な言い訳をするタイプではない。それは美保の言うとおりだと、小春も思った。

「それに佑二さんって、いかにも頑固一徹、昭和の職人、家族なんて二の次って感じだけど、本当はそうじゃないでしょう。だから、大事な小春ちゃんに二度と会ってもらえないような真似はしないと思うのよね」
「それは……どうでしょうか。もう私も大人だし、どう思われたって関係ないって思ってるんじゃないですかね」

 実際、昨晩のことを考えたら、父を嫌わない自信はまるでない。一晩たっても、あの態度はないだろうと、憤っている気持ちは減っていなかった。

 小春は思わず唇を尖らせたが、美保は苦笑する。

「そんなことないわよ。私とのことも『小春の賛成がなかったら、君と再婚することはできない。すまない』って謝られたくらいだし」
「えっ!」

 小春は目を見開いた。

「二年前の事ですか? 私、普通に大人なのに、お父さんそんなこと言ったんですか?」

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