誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
美保の問いかけに、黎子はまた深々と頭を下げた。
「何年も前から、風の噂で、佑二さんが地元でレストランを開いたことは聞いていました。ですがどこでやっているのか、自分で調べようとは思わなかった。近づいてはいけないと思ったから」
そして黎子は顔をあげ、ちらりと小春を見つめる。
「……っ」
そのすがるような瞳に、小春はとっさに視線を逸らしていた。
そんな目で見られたくなかった。自分をまきこんでほしくない。当事者になりたくない。本能的ではあるが、とっさにそう感じたのだ。
(そんなの……勝手だわ)
隣に座っている閑が無言で、そっと小春の膝に手を乗せる。
ここにいるよ――と言われた気がして、小春は唇をかみしめる。
(そうよ……逃げない……逃げ出さない……苦しくても、向き合うんだ)
小春は何度も自分に言い聞かせ、それからまた黎子の言葉に耳を傾ける。
「私は今、大阪でブライダルサロンを経営しています。今日は東京から来ましたが、系列にエステサロンもいくつか持っていて……仕事は楽しく、やりがいがあり、順調です。ただ、年頃の女性とのかかわりが多くて……つい、小春も年頃になったけれど、どうしているんだろうと、どうしても気になって……スマホで検索してしまいました」