誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 普段大人しい娘の大きな声に、佑二は驚いたように小春に視線を向ける。
 黎子も同様だ。突然大声を発した小春を見て、目を丸くした。

 だが小春の怒りは収まらない。
 気が付けばプルプルと震えながら椅子から降り、両親の前で仁王立ちしていた。

「お父さん、自分勝手にもほどがあるわよ! 私に会いたいって思うお母さんと、私に会わせたくないお父さんで、あれこれ勝手に決めて、当事者である私と、一番信頼を裏切ってはいけないはずの、パートナーの美保さんを仲間外れにして! 挙句の果てに、こんなに心配させて! いったいどういうつもりなの!?」
「小春……」

 佑二は慌てたように視線をさまよわせながら、隣の美保と、それから小春を交互に見つめた。

「俺はただ……小春を傷つけたくなかったから……だな……」

 その言い訳の声は細く、小さい。
 おそらく小春に言い返す言葉が見つからないのだ。

「子ども扱いはやめて!」

 小春はブンブンと首を振る。

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