誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「今さらだけど、虎太郎お兄ちゃんは、お母さんのことを、私に教えてくれた。会いたいと思ってるみたいだって……。そりゃ、いきなり聞かされた時は、驚いたし……なんでそんなこと私に聞かせるんだって、聞かなきゃよかったって、お兄ちゃんに腹が立ったけど、今ならわかる。お兄ちゃんのほうが、ずっと私を信頼してくれてるんだよ。辛かろうが痛かろうが、ちゃんと自分でどうするか考えなきゃいけないってことに、気づかせてくれたの! なのに、お父さんは相変らず私を、中学生かなにかだと思ってる……私のためと言いながら、全然私のためになってない」
「――小春」

 その剣幕に、佑二はシュン、とうなだれてしまった。それを見て、美保がかわいそうに思ったのか、励ますようにそっと肩に触れる。

 どうやらこの夫婦は元通り、関係が修復しそうだ。だが小春はそれどころではない。次に母、黎子をまっすぐに見つめた。

「お母さんも勝手だよ。十年も連絡をとってなかったお父さんに連絡して、私のことを聞きたいなんて……。っていうか、本当に私のことを知りたかったの? お父さんとヨリを戻したいって思ったわけじゃなくて? 私をダシにしたんじゃないの?」


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