誘惑前夜～極あま弁護士の溺愛ルームシェア～

「そっ、それはない！　全然ないわ！　誤解です！」

　黎子は慌てたように首を振り、顔の前で手をブンブンと振る。

「本当に、小春のことを知りたかったの……」
「そう。だけど、お母さんはそうやって誤解されても仕方ないことをしたんだよ。お父さんにはもう新しい家庭があるのに、こそこそ会うような真似なんかして。今の奥さんが知ったら、絶対嫌な気持ちになるでしょ？　私だって、そんなことされたら、会う会わない以前の問題だよ」
「……それは、反省してます……本当にごめんなさい……」

　小春の指摘に、黎子も肩を落として、うつむいてしまった。

　こうして、父と母に、言いたいことを言って多少はスッキリした小春だが、自分が正しいと思っているわけでもない。
　あらためて、両親に自分の気持ちを伝えることにした。

「こうは言ったけど、私だって、人の事言えない。わかってる。昔から私は、不安をぼんやり抱えたまま、誰にも相談しないで、何もせずに仕方ないとあきらめたり、忘れようとしてた。自分の気持ちを口にして、誰かに説明したり、理解してもらうのも大変だから、極力避けてた……そういう人間だったから、子ども扱いされてたんだと思う」