誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 小春はふうっと息を吐いて、それからカウンターで小春の話を黙って聞いている閑を肩越しに振り返る。

「でも変わりたいの。たぶん、これからも、たまにそういうところが出てくると思うけど……。でも、毎日少しは成長してるって思いたいの。だから遅いかもしれないけれど、頼りないかもしれないけど……ちゃんと、私をひとりの大人として扱ってほしい」

 それは全て、閑の隣に立っていたいからだ。
 そしてそんな自分を好きでいたいからだ。

(この人にふわさしい女性でいたい……)

 本気でそう思う。

 人からしたら、これはただの恋心だ。
 けれどその思いが自分を強くしてくれる。昨日より今日の自分を好きになれるよう、努力するエネルギーになっている。

「小春……」

 黎子がどこかまぶしそうに、小春を見つめた。

 その視線を受けて、小春はうなずく。

 今後、母と自分の関係がどうなるかはわからない。
 なにしろ十年離れていたのだから、お互い変わってしまったところはたくさんあるだろう。

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