誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「ねぇ、閑さん」
「ん?」
「お母さん……連れてきてくれてありがとう」
「どういたしまして」

 さらりと言われたが、本当にすごいことだと小春は思う。

(だって、お母さんが来なかったら、お父さん、美保さんに捨てられてたかもだし……)

 本当に、閑には感謝しかない。

「それでね、不思議なんだけど、どうしてお母さんを連れてきたの?」
「んー……不思議?」

 閑が穏やかに問いかけると、重なった体を通じて、声が響く。

 なんだかそれが心地いい。

 小春は少し甘えた気分になりながら、うなずいた。

「うん。私、お母さんのことはそんなに詳しく話してなかったでしょう? だからどうして、お父さんが会ってる相手が、別れたお母さんだってわかったのかなって」

 母が来てくれたことで、とんとん拍子に解決に向かったのだが、なぜ閑が母が原因だとわかったのか、それはいまだにわからなかった。
 だが閑にとって、それはネタ晴らしというほどのことでもないらしい。

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