誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「有休なら全然使ってなかったから、気にしなくていいよ。急ぎの案件もなかったし。先生も仕方ねーなって送り出してくれたよ」

 閑はおどけたように肩をすくめて、そして顔を近づけた。

「さて、そこで小春に相談なんだけど」
「相談?」

 まさか閑に相談されると思っていなかった小春は、目を丸くする。

「今回の件、成功報酬をもらっていいかな」
「えっ?」

 驚いたが、確かに小春は閑に働いてもらったにもかかわらず、びた一文払っていない。

(弁護士に相談するときは確かに相談料もいるし、手付金とか……あるわよね)

 大変な努力をして弁護士になっているのだから、その知識にお金を払うのは当然だ。目に見えない技術に対して、支払い感覚がおろそかになっていた自分を反省するしかない。

「そうですよね! すみません、私全然思い至ってなくて!」

 小春は慌てて、真面目にうなずいた。

「成功報酬もですけど、手付金とか、こっちに来てもらった交通費とか、普通は私が――んっ……」

 なんと、閑に唇をふさがれてしまっていた。

「なっ、なんですか?」

< 284 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop