誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 だが閑はしっかりとうなずいた後、それからいそいそと、小春が着ているセーターに手を伸ばし始める。

「この展開は、まっ、まさか……」
「ただ、どうしてもっていうのなら、これが手付金ということで手を打とうかな」
「ええっ!」

 言いたいことはわかるが、両親の離婚問題の手付金替わりに、娘がペロッとセーターを脱がされるいわれはない。

(というか、昨日からさんざんそういうことをしているのに!?)

 イヤではないが、少しばかり回数が多すぎではと思ってしまう。
 隙あらば抱かれている気がする。

 小春は恥ずかしいやらなんやらで、パクパク口を開けたり閉じたりしながら、必死で閑を押しとどめるのだが――。

「大好きだよ。大好き……小春はこんな俺が嫌い?」

 少し甘えたような閑の告白を聞くと、小春は瞬時に、全ての抵抗する気持ちを奪われてしまうのだ。

「もう……」

(仕方ない。これも惚れた弱みだ!)

 小春は苦笑しながら、閑の顔にみずから顔を近づけ、

「閑さんのこと、好きですよ。少々だらしないところも全部含めて、あなたが大好きです」

 と、精いっぱいの思いを込めて、キスをしたのだった。

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