誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
続く明日へ
十二月三十一日、大みそかの夜。
【なかもと食堂】は、商店街の人や常連客たちだけでなく、閉店を聞きつけた、かつての客でにぎわっている。席は当然埋まっており、テーブルの上は料理でいっぱいだ。
「大将、大丈夫です?」
少しくらい休憩をしてもらった方がいいのではないかと、小春がたまっていく食器を洗い、片付けながら問いかけると、
「ああ、大丈夫だ。今日くらいは最後までやりきりてぇしな」
ねじりはちまきをした大将は、ガッハッハッと笑って、小春にウインクしながら、力こぶを作って見せた。
それを見て、小春の父――佑二が、心配そうに眉間にしわを寄せる。
「おいおい、本気か? あまり無理をするなよな」
「ああ、わかってるって。来年の春からは徳島だしな。無理はしねぇ」
「ならいいが」
佑二は肩を竦めて、まな板の上の魚をおろし始める。
そう、今日は佑二も美保を連れて、東京にやってきているのだ。