誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
すると閑が小春の視線の意味を読んだのか、真面目な顔でささやく。
「料理しないから、生ごみはないよ。食事は基本的に外食だし。弟から、生ものだけは持ち込むなってきつく言われてるからね」
「はぁ……」
そんなことを偉そうに言われても困る。
本当に言葉が出てこない。
そんな小春を見て少し焦ったのか、閑は聞いてもないのにペラペラと話し始める。
「俺、掃除、洗濯、炊事、全部苦手……っていうか」
「いや、苦手ってレベルじゃないですよ。間違いなく、マイナス一万点です」
なまじっか、それ以外が完璧なために、落差がひどい。
ぴしゃりと小春が言い放つと、閑がグッと息を呑み、それから「はぁ……おっしゃり通りです……」とため息を吐いた。
「どうせ俺は仕事で忙しいし、休みもあってないようなもんだし、このままでもいいやって思ってたんだけど、やっぱり小春ちゃんの反応を見るに、人としてまずいことがわかった」
「あ……失礼なこと言って、すみません……」
衝撃のあまり、思わず思ったことを口にしてしまったが、マイナス一万点とは、憧れの男に向かっていうセリフではないだろう。