誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
ペコっと頭を下げると、「いや、いいんだ。はっきり言ってくれてよかった」と、閑は微笑む。
「で、ものは相談なんだけど。この部屋をいつもきれいに、人が住めるようにしてくれないかな。対価は払う」
「え?」
「ひとり暮らしをしながら仕事を探すのもいいけれど、大事な貯金は切り崩さないほうがいい。だからここは、俺と取引をしようってこと」
閑はにっこりと笑って、長身を少し折り曲げるようにして、小春の顔を正面から覗き込んできた。
「仕事が決まって、それから新しいところに引っ越すまで、どこの誰かとシェアハウスするより、俺としよう」
「神尾さん……」
「もちろん、紳士であることを誓うよ。これは契約だ。小春ちゃんはこの部屋を人並みに住めるようにする。そして俺はその対価を払う。契約書も槇先生に作ってもらうつもりだ。どうかな?」
(……一緒に住む対価……?)
閑の、美しいこはく色の閑の瞳は、まっすぐに小春を見詰めていた。
そこには何の裏もない、純粋な善意しか見えない。