誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
紳士も何も、そもそも彼ほどの男が、自分をどうこうする必要などどこにもないのだ。
小春は、彼にとって馴染みの食堂で働いているだけの娘で、これはただの親切なのだから。
「――わかりました」
小春はうなずいた。
その瞬間、閑がパッと笑顔になる。
「ほんとに?」
「はい。新しい仕事が見つかるまで、どうぞよろしくお願いいたします」
不安がないわけではないが、自分は、能力が壊滅的に偏っている神尾の日々の生活を、少しばかりよくするだけ。
住み込みのメイドと思えばいいのかもしれない。今までだって、中本の自宅兼店舗に住み込みで働いていたのだ。同じようなものだ。
そう思うと、ふっと体から力が抜けた。
(よーし……本来の部屋になにがなんでも戻してやるぞ!)
小春は、混とんとしたエリート弁護士の神尾の部屋を見回しながら、ある種の闘志を燃やし始めたのだった。