誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「ごちそうさま」
「ありがとうございます」
レシートとお釣りを渡しながら、小春は閑を見あげる。
閑が来店してから出て行くまで三十分。たった三十分だが、小春にとっては特別な時間だ。店は常連客で繁盛していて、忙しいが、ほんの数分の会話だって大事にしたい。
「今回の出張は長かったですね」
「そうだね。内容は話せないけれど、少し込み入っていたから」
閑はにっこり笑ってうなずく。
「でもさ、来た時にも言ったけど、俺やっぱり大将の作るメシがないと調子でないんだよね。また明日から毎日通うから、よろしく。看板娘の小春ちゃんの顔も見ないといけないし」
「はいっ! こちらこそ、どうぞ今後ともよろしくお願いいたししますっ!」
看板娘云々はお世辞だろうし、おいしい食事を作るのは大将であって自分ではないのだが、小春も大将の作る料理が大好きなので、褒められると純粋に嬉しい。
「お仕事頑張ってくださいね」
小春も元気よくうなずいて、出て行こうとする閑を見送ろうとしたのだが――。